小 杉 学(理事)
明海大学 不動産学部 不動産学科 准教授 博士(学術)
マンションコミュニティ研究会理事の小杉です。普段は明海大学の不動産学部で都市計画、地域再生、マンション管理を教えています(ちなみに、不動産学部というのは日本では明海大学にしかありません)。研究者としては、都市計画分野では空き家問題と絡めた地域再生、マンション分野では、団地型マンションの持続再生論、被災マンションの敷地売却問題、マンションの終末論に取り組んでいます。中でも、マンションの終末論には先輩方や仲間とともに、力を入れて取り組んでいます。
こういった難解と感じられる学術的な話も、かみ砕いてコミ研で紹介していきたいと考えています。一方、私自身は管理組合の理事でもなければ、管理会社のフロントマンでも、マンション管理士でもありませんので、現場での経験値はコミ研に参加される皆様と比べると相当に乏しいことは明らかです。したがって、大学教員だから偉いんだぞ、何でも知っているんだぞ、私が教授してやる、ということではなく(大学教員にそういった期待をしている方には申し訳ないですが)、皆様から現場で発生しているリアルな問題、そこでの苦労、またはそれを乗り越えた喜び、関係者間での創意工夫などのお話を聞き、学ばせていただくことを目的としてコミ研に参加しています。そこから得られた知見をもとに、現場から少し離れて客観的、学術的な立場から、マンション問題についての整理やヒントを皆様に提供できれば、研究者である私の役割は果たせるのかなと思っています。
長年、マンション問題やまちづくりに研究者の立場で関わってきましたが(仙台の大学にいた4年間は震災復興にも関わりました)、私自身が現場の人々から、知識や技術だけではなく、人としての矜持や気概、優しさや思いやり、そこから発生する連係プレーやチームとしての哲学まで、多くのことを学ばせていただきました。「コミュニティ」という言葉は、様々な使われ方がなされるため誤解を生んだり、嫌悪感を抱く方も少なくありません。それでも、私は上記の経験から、コミュニティ的なもの(別の言葉でも構いません)が、マンションや地域を育んでいくためには必要不可欠だと確信しています(科学的には実証しきれない部分もありますが)。知識や技術だけでは人間組織は決してうまく動きません。私がマンション「コミュニティ」研究会に期待し、参画している理由はここにあります。
マンション問題の発生原因は様々です。法律、経済、行政施策、工学技術といった専門的な問題に原因があることもありますが、多くの場合は、人間関係に原因があると思われます。実際にマンション問題の現場にいくと、「クレクレ星人」を見かけることがよくあります。行政や専門家、管理組合の批判と、援助や支援の要求しかしない方々です。コミ研の活動が日本中のマンションから「クレクレ星人」を少しでも減らし、自らのマンションを向上させる住民間の学び合いと主体的・創造的な行動が「意識が高いね」ではなく、ごく普通の、当然の姿になることを期待するとともに、微力ながら私自身も精一杯、できる限りの貢献ができればと考えています。どうぞよろしくお願い致します。